大馬神社と花の窟神社・おぞましく危険な仮説を立てました!の詳細

大馬神社と花の窟神社・おぞましく危険な仮説を立てました!
神秘と感動の絶景を探し歩いて  Beautiful superb view of Japan
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記事タイトル 大馬神社と花の窟神社・おぞましく危険な仮説を立てました!
概要

9月26日の記事で、大馬神社を紹介しました。(大馬神社・埋められた鬼の首と巨大な自然石狛犬)『鬼ヶ城』の鬼が坂上田村麻呂に退治され、その鬼の首を地中に埋めます。その上に社を建て、当時の熊野国総鎮守としたのが、この大馬神社とされています。これが鬼ヶ城です。鬼の首の上に神社とは、さぞ…… more かし強い崇りや怨霊が懸念されたのでしょうね。下は大馬神社。また大馬神社に狛犬はなく、はるか離れた海岸の獅子岩が、昔から大馬神社の狛犬とされていることも紹介しました。さて、実はこの大馬神社と獅子岩の間に、大馬神社里宮が鎮座しています。ここでふと思ったのは、これら重要な三地点は、一直線上に位置しているのではないかという疑問です。ライン上に並ぶ古い神社とは?先日、津島神社の記事において、地図を示してこう論じました。「世界遺産『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」では、宗像大社と中津宮の大島、そして沖ノ島の3カ所が一直線に並びます。このパターンは日本の沿岸部にいくつもあり、海洋系信仰の一典型なのです。念のため他の例も示しておきます。近畿大学の野本寛一先生は、『日本の民俗学シリーズ① 石の民俗 (雄山閣)』において、浜名湖における「短蛇様」の依り神信仰に関し、亀ヶ淵・城が鼻・榊の田・清源院・短蛇山がほぼ一直線上にあると記されています。また、下は青森県下北半島の恐山です。この説明板には奥の院地蔵山、不動明王、奥の院釜臥山嶽大明神本地釈迦如来が一直線上に奉納され三者が一体であることを意味しておりますと書かれています。ちなみに、宗像大社は福岡県、浜名湖は静岡県、恐山は青森県と、祭祀の直線性は全国に広がるパターンなのですが、ほとんど研究は進んでいないように思います。原因は、これらの直線性を「レイラインですね」の一言で軽く片づけるマニアがいたり、かつての「太陽の道」などの影響で日本地図上にやたらと線を引くなど、この手法が玉石混交状態になり、説得力を失ったことが大きいと私は思っています。少なくとも同じ信仰圏の中での祭祀的位置関係、あるいは同じ時代の遺跡同士など、明確な共通点を持つものについて直線性を論ずることが必要なのでしょう。  ☆元に戻ります。大馬神社は海岸沿いの限定された信仰圏ですから、大馬神社と里宮と狛犬たる獅子岩に一直線の法則が当てはまる可能性があります。ブログのネタになればと、さっそくグーグルの地図で、大馬神社から里宮を通るラインを延長しました。はたして、このラインは獅子岩にぴったり達するのか?結果は、驚くべきものでした。延長線は獅子岩からはずれていました。しかし、すぐ近くの、別の神社付近に達したのです。その神社の名前は、あの有名な「花の窟神社」。もし現在は住宅等にびっしり囲まれて狭くなっている里宮の神域が、かつてはもう少し奥まであったとすれば、その中心地を通るラインはぴったりと「花の窟神社」に達するのです。このお社は、伊弉冊尊(イザナミノミコト)が火神・軻遇突智尊(カグツチノミコト)を産み、灼かれて亡くなった後に葬られた御陵とされる原始信仰そのままのお社です。『日本書紀』には「 一書曰伊弉冉尊火神(いざなみのみこと)を生み給う時に灼(や)かれて神退去(さり) ましぬ 故(か)れ紀伊国 熊野の有馬村に葬(かく)しまつる 土俗(くにびと)此神の魂(みたま)を祭るには 花の時に花を以って祭る 又鼓 吹幡旗(つづみふえはた)を用て歌い舞いて祭る」とあるのですが、「有馬」と「大馬」もなにやら関係があると感じるのは私だけでしょうか?では、恐ろしくおぞましい結論とは?あの有名な「花の窟神社」がこんな近くにあったんだと最初は驚きましたが、よくよく考えると、驚くべき仮説が浮かび上がります。はるか過去には、大馬神社と里宮と花の窟神社は、一体のものではなかったのか。つまり、花の窟神社は大馬神社の「浜宮」だったという可能性です。むろん逆に、大馬神社が花の窟神社の奥宮だったとも考えられます。しかしもしそうなら、大馬神社に祀られているのは、鬼の首ではなく、イザナミ神の首である可能性さえ出てくるのです。このパターンは吉備にもあります。吉備津彦に退治された「温羅」という鬼こそ、元々は吉備の正当な王ではなかったのかという説が根強いことは前にも述べました。勝てば官軍、負けた方は悪者として正史に残ります。ならばここでも、「鬼」とはイザナミ神あるいはイザナミ神を信仰する土着の王ではなかったのか。では、イザナミとはいったい何者か?畏れ多くもイザナミ・イザナギといえば、皇祖神である天照大神の親神様。それを征伐された鬼とは、なんという失礼なことを、とお怒りになる方もおられるでしょうね。しかも悪者として首を埋められるなどとは、絶対ありえないと。しかし、神話学の世界では、イザナミ・イザナギ両神はそう簡単な存在ではありません。まず、記紀神話では、なかなか壮絶なストーリーが語られています。イザナミ神は、火の神カグツチを産んだために陰部に火傷を負って亡くなります。そのカグツチはイザナギに殺されました。すでにこの時点で、驚くべき残酷なストーリーになっています。妻が子どもを産んで亡くなったのなら、自分の命をかけて赤ちゃんを産んでくれたことに感謝し、残った子を大切に育てるのが当たり前。愛する妻を死に追いやったからと、生まれたばかりのわが子を殺す親はふつういないでしょう。 さらに死後、イザナミは自分に逢いに黄泉国までやってきたイザナギに腐敗した死体(自分)を見られたことに恥をかかされたと大いに怒り、恐怖で逃げるイザナギを追いかけます。そして黄泉比良坂(よもつひらさか)で、迫りくるイザナミに対してイザナギが大岩で道を塞いでしまうのです。イザナミは閉ざされた大岩の向こうの夫にむかって「愛しい人よ、こんなひどいことをするなら私は1日に1000の人間を殺すでしょう」と叫びます。これに対してイザナギは「愛しい人よ、それなら私は産屋を建てて1日に1500の子どもを産ませよう」と返し、二人は離縁したのです。なかなか壮絶なストーリーですね。「インディージョーンズ 失われた黄泉の秘宝」なんて映画ができそうです(^_^)/~これらは現代の道徳観や倫理観とは相いれません。しかしそれは良い悪いの問題ではなく、別の神話的原理、宗教的原理がこの物語に働いているからです。松前健先生によるイザナミの原像大学などの研究機関で、日本神話や神社神道を研究された方なら、誰しも一度は読んでいるのが松前健先生の著書でしょう。ウィキペディアで「松前健」を検索すると、折口信夫に師事、民俗学を学ぶとあり、さらに民俗学、文化人類学、歴史学と幅広い視点から、古代の王権と神話との関わりを考究。海外の神話学の方法も積極的に採り入れた。日本神話学研究の第一人者。と書かれていました。私は松前先生が立命館大学に移籍されたころ、たまたま出版社のイベントでお会いしたことがあります。海外の神話伝承を含む膨大な知識と分析力をお持ちの重鎮にもかかわらず、私のような若造にも気配りを欠かさない、優しいお人柄が印象的でした。その松前先生が書かれた「日本の神々」という中公新書に、イザナギ・イザナミの二神について次のような記載があります。・二神(イザナギ・イザナミ)は、海洋的性格とともに、天空神・地母神の一対の夫婦。・アマテラスと二神の親子関係は、決して本来的なものではない。・二神の神話が宮廷の神話体系に組み入れられたのは、七世紀中葉以降。そのことは、イザナギ・イザナミの社に対する朝廷の冷淡さからもわかる。・もともとは淡路島を中心とする「海人」たちの奉じるローカルな地方神。・花の窟でイザナミの魂を花を持って祭るというのは、もともと山の母神「ムスヒ」に季節の花を添えて、その蕃殖力の「いや栄(さか)」を祈るのが目的だったが、後に海人系の女神にも行われるようになったもの。稚拙なまとめで分かりにくいのですが、ポリネシア系神話とも比較しながら論じられている原文には説得力があります。これらを一言で言うと、紀伊半島東南部、三重県熊野市から和歌山県新宮市にかけての地域には、山の母神「ムスヒ」の信仰 → 海人系の女神に対する信仰 → イザナミ信仰 → 宮廷神話への取り込みという変遷が考えられるというわけです。もちろんこの変遷は平和に推移しただけではなく、血なまぐさい征服や反抗なども複雑に絡んでいたはずです。勝てば官軍で、征服された前の指導者を悪者として描きつつも、その死霊を恐れて神社に祀り上げることもあったでしょう。さらに、同じ神を奉じる集団同士の戦いもあったかもしれません。もし大馬神社と花の窟神社が、古い古い時代に同じ神を祀る時代があったと仮定します。イザナギ・イザナミ神話が宮廷神話へ取り込まれる前、ローカルな神々の栄枯盛衰の中で、イザナミ神を信仰する勢力が古い王の首をはねたか、あるいはイザナミ神を奉じる王の首が反対勢力にはねられたか、そのどちらかの事実があったのではないでしょうか。当然この仮説は、誰も言わない仮定の話にすぎず、そんなことはあり得ないと多くの方が否定されるでしょう。しかし、大馬神社の狛犬たる獅子岩と、花の窟神社の距離はわずか数百メートル。東京や大阪の市街地にある小さなお社どうしならそんな距離に位置することもあるでしょう。しかしこんなところで、全く由緒が異なる重要な古代信仰のお社どうしが眼と鼻の先にあるなんて、私には納得がいきません。とても昔から無関係だったとは思えないのです。  ☆なお松前先生は、ディクソンやウイリアムソンがいう「原古の岩」の神話についても言及されています。この「原古の岩」とは、南太平洋に広がる神話なのだそうで、万物の母体とされます。紀伊半島東南部の奇岩怪石も、単なる岩石信仰だけでなく、「原古の岩」というインターナショナルな神話圏の中で考えるべき事柄なのかもしれません。家計と休日予定を何とかやり繰りし、各地を回っております。ネタも少なくなり、先行きが不安ですが、それぞれクリックしていただくとネタ集めの励みになりますのでよろしくお願いいたします。にほんブログ村にほんブログ村神社・仏閣ランキング close

大馬神社と花の窟神社・おぞましく危険な仮説を立てました!
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タグ 神社 神話 伝説
投稿日時 2018-10-26 03:00:02

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