伊勢市朝熊町、朝熊(あさま)山頂にある金剛證寺(こんごうしょうじ)は、昔から伊勢神宮の鬼門を守る寺として「神宮の奥之院」ともいわれています。「お伊勢参らば朝熊をかけよ、朝熊かけねば片参り」と伊勢音頭の俗謡にも唄われ、参宮する人々は金剛證寺にも参詣するのが常でした。天長二年(825…… more )弘法大師空海が真言密教の根本道場を建て、本尊に福威知満虚空蔵菩薩を祀って勝峰山兜率院金剛證寺と称しました。弘法大師空海はここで、虚空蔵求聞持法を修したと伝えられていますではまず本堂から。本堂は、慶長１４年（１６０９年）姫路の城主池田輝政公の寄進により再建されたもので、桃山時代の精華をつくした檜皮葺の堂々たる建物です。伊勢神宮の奥の院ともいわれ、御本尊の福威智満虚空蔵菩薩とともに、天照大神をお祀りし神仏習合の思想を表しています。またその御本尊は秘仏で、伊勢神宮のご遷宮の翌年に、二十年に一度のご開帳なのだそうです。次は、弘法大師が掘ったと伝わる連間の池と連珠橋。さて、本堂周辺から坂道を上がっていくと、こんな門がありました。これをくぐると、皆が極楽浄土へ往生できるという極楽門です。さらに進みます。その先には、奥の院がありました。ここでは先祖供養が行われます。実は、極楽門と奥の院の間には、こんな景色がありました。鬼気迫る圧倒的な卒塔婆群です。こんな巨大な卒塔婆群は見たことがありません。奥の院への参道にも、ずらっと並んでいます。ところどころに、故人の遺品が掛けてありました。例えば、農機具のヤンマーのマークが入った、古びた帽子・・・・その帽子をかぶって、田んぼで汗を流して働いておられたおじいちゃん？の姿が目に浮かびます。あまりの迫力に、つい「鬼気迫る」と失礼なことを書いてしまいましたが、ひとつひとつはその家族縁者にとって大切な人だったに違いありません。若くして亡くなったのであろう方の遺品もありました。この卒塔婆は、いろいろな思いを持って、身内の方が故人の冥福を祈っておられるのですね。　　☆卒塔婆群について、こんな立て札がありました。山中他界観が、古代より引き継がれているというのです。そもそも卒塔婆は、古代インドで「仏塔」という意味のサンスクリット語「ストゥーバ」を漢訳したものであり、ストゥーバ（仏舎利塔）とは釈迦の遺骨を納めた塔で、これが五重塔の起源といわれています。その五重塔をもとに、後に五輪塔が造られます。この五輪塔を簡略化してできたのが卒塔婆とされています。普通は故人の供養のために立てるのであって、山中他界観などを意識することはないと思います。しかし、少なくともこの朝熊山では、山に人々の霊が集まるという山中他界観に基づいた卒塔婆なのですね。まさにこれは、「人は死ねば（魂は）お山さ行ぐ」と言い伝えられてきた、青森県下北半島の恐山と同じ伝統信仰なのです。朝熊山は伊勢湾に面していますから、この辺りは海人系の海上他界観だろうと単純に思っていました。九州や南方の島々、それに瀬戸内地方では、人は亡くなったら海の彼方に行ってしまうと信じられていることが多く、これらを海上他界観といいます。常世の思想、ニライカナイや竜宮伝説、それに南紀の普陀洛渡海なども、この海洋信仰の延長線上にあると言われています。 しかしこの朝熊山では、人は死後山に上るのです。いろいろと想いをはせる事の多い、朝熊山の金剛證寺でした。家計と休日予定を何とかやり繰りし、各地を回っております。ネタも少なくなり、先行きが不安ですが、それぞれクリックしていただくとネタ集めの励みになりますのでよろしくお願いいたします。にほんブログ村にほんブログ村神社・仏閣ランキング close

朝熊山の金剛證寺・伊勢の鬼門を守る霊山