司馬遼太郎は、『街道をゆく　　壱岐・対馬の道』のなかで「大和の三輪山は山のみを神聖視したが、近代に入り、国家神道の影響によって殿舎をつくってしまった」と残念がり、しかしこの天神多久頭魂神社については「対馬の佐護の海風のなかにある多久頭魂神社は、『延喜式』以来、国家に登録された神社…… more でありながら、古代の様式のままである。　鳥居までが余分かと思われるほどで、山麓の一郭を清めて神聖空間をにおわせているだけなのである。」と原始の信仰を表現しています。さらに二つの石積みについては、「磐境(いわさか)です。」と社家の永留さんに説明されて、モンゴル高原の信仰物であるオボを連想しています。　　☆さて、「オソロシドコロ」の石積みピラミッドの最上部には、木の祠がありました。天神多久頭魂神社の石積みで、木の祠に相当するのが、これらの奇妙な岩々です。デコボコザラザラした石の表面に穴が開いています。実は、対馬の他の神社にも、このような岩をしばしば見かけました。そうとう古い民俗信仰なのでしょう。地上にも、同種の岩がありました。たとえこれらの奇妙な岩石を乗せたのが比較的新しいとしても、それはそれで、このような「奇しき岩」には何らかの強い霊力があるという意識が、近世まで続いていたことになります。その前提で、対岸に位置するこの岩をご覧ください。この岩と神社と峰の頂上部が一直線に並びます。人が通り抜けられるような穴が開いています。なんとも異様な、巨大盃状穴。対馬の神社の多くは、岩石や積み石を祀っているといわれています。とりわけ、ザラザラして穴のあいたような巨岩が「奇しき岩」として重要視されたのなら、天道信仰の聖地にあるこの巨岩が、なんの信仰もなく無視されていたとは到底思えません。この巨岩と、天神多久頭魂神社の神籬磐境（ひもろぎいわさか）と、大和では巻向山に当たる背後のピークが線上に並ぶことは、信仰上大きな意味を持っていたはずです。(なおもしこの推理が正しければ、三輪山が天道山に、箸墓古墳がこの巨岩に相当します。)　　☆この周辺には、これに類する岩は全くありません。この背後は岩壁ですが、普通の割れ方をした岩盤です。ここで類例を出します。広島県の因島の対岸に見える、生名島の巨石は、古代に他所から運ばれたものだと説明板に書かれています。神体山の見える海際にあるところも似ていますから、ひょっとすると、天神多久頭魂神社にかかわるであろうこの奇妙な岩も、祭祀目的で他所から運ばれたのでしょうか？いずれにしろ、創祀年代さえ不詳のお社ですから、すべては古代の闇の中ですね(^_^)/~☆追記です。対馬の積み石文化をみて、どうしても連想するのが、阿波の石積み文化です。例えば、地元で卑弥呼の墓かといわれる徳島市・八倉比売神社の石積み遺構。美馬市穴吹町にあるのが、磐境神明神社の祭祀遺跡。たんに材料の石板が入手しやすかっただけなのでしょうか・・・・取材とネタに苦労しておりますが、三つクリックしていただくと大変励みになります。よろしくお願いいたします(^_^)/~にほんブログ村神社・仏閣ランキング close

天神多久頭魂神社と司馬遼太郎と異様な巨石