北向岩屋十一面観音は、猪子山の頂上部にありました。陽光眩しいその姿と反対に、わずかな木漏れ陽の中に鎮座するのが、中腹の岩船神社です。そして、社殿の背後に異様な存在感を示すのが、ご神体と推測される船型巨石です。説明板には、こう書かれています。この岩船は、神亀5年（728年）5月朔日…… more 、高島比良の山より湖上を この地に渡りたもうた比良大神（白髭明神）が御乗船されたものと伝えられている。 この横の社は、岩船社と称し、渡湖の際、岩船を先導された津速霊大神が祀られている。古代の住民は奇石、怪石に対する崇拝が盛んで、この岩舟も頂上の磐座（いわくら）と共に巨石崇拝時代の遺品といえよう。岩船(磐船)と称される、船に似た岩というのは、日本各地に結構存在します。例えば、大阪府交野市私市の磐船神社。ここでは、饒速日尊（にぎはやひのみこと）が天の磐船に乗って降臨したとの伝説が語られます。もう一つ重要だと思われるのが、京都府亀岡市の出雲大神宮です。本殿のすぐ横には、こんな岩が置かれています。よほど大切な岩なのでしょうね。さらに、本殿背後の磐座も、方向によって船のようにも見えます。このように、各地の神社で船のような岩が神聖視されるのは、なぜなのでしょうか？石の船が水に浮かぶことはありえません。ましてや、空を飛ぶこともありません。(饒速日尊がＵＦＯに乗ってやってきた異星人だと真面目に考えている人は別として(＠_＠;)　　☆以前記事にした、和歌山県古座川町の「河内祭」です。もし船を重要な要素として祭りを行う人々が、新天地を求めて川を遡り、程よい土地を発見して定住したとします。そこに川や池がなくとも、やはり先祖代々祀ってきた船に関わるシンボルを、神社などで大切にするのではないでしょうか？つまり、石の船が祀られるところは、かつて海から川を遡って移住してきた集団がいたのではないかと私は思います。その証拠に、京都の貴船神社の創建伝説を見ると社伝では反正天皇の時代の創建とし、神武天皇の母である玉依姫命が、黄色い船に乗って淀川・鴨川・貴船川を遡って当地に上陸し、水神を祭ったのに始まると伝えている。社名の由来は「黄船」によるものとし、奥宮境内にある「御船型石」が、玉依姫命が乗ってきた船が小石に覆われたものと伝えるとされるように、明らかに川を遡っています。なお「玉依姫命が」という文言は、「玉依姫命を奉ずる集団が」という意味であることはいうまでもありません。猪子山の岩船神社で言えば、もともと日本海を渡って丹後や若狭に渡来した集団が、船で琵琶湖沿岸を行き来していたのではないでしょうか？滋賀県教育委員会編集発行の『長命寺湖底遺跡調査概要』によれば、縄文時代後期・晩期の土器や石器と丸木舟が出土しています。やはり琵琶湖は、縄文の昔から丸木舟で人々が行き来していたのです。先祖が舟でやってきた人々の記憶が、船に似た岩を見つけ、あるいは部分的に加工して「船岩」という磐座を祀ったのではないか。そして先祖や神霊が、天や海の彼方から時を定めて磐座へ来臨する観念が、岩船伝説を形成したと推理する次第です。ちなみに、中国では、１４００年ごろに建造された全長４４丈（１５０メートル）、全幅１８丈（６２メートル）という巨大船が発掘されているとか。信じられない大きさですが、なんとなく猪子山の岩船と似ているような・・・・・(＠_＠;)専門家の計算では８０００トンの船に相当すると言われるそうです。喜望峰を回ったバスコダガマの旗艦はわずか１２０トン。１４００年ごろの建造とはいえ、それ以前に同種の小さな構造船が作られていたでしょうから、ひょっとすると意外に大きな船で日本海に着いた人々がいたのでは、などとこっそり想像しております(^^♪(いくらなんでもという方は、まあ聞かなかったことに・・・) 取材とネタに苦労しておりますが、三つクリックしていただくと大変励みになります。よろしくお願いいたします(^_^)/~にほんブログ村神社・仏閣ランキング close

岩船神社という謎・なぜ岩の船が浮き、空を飛ぶのか？