常陸の社 雲井宮郷造神社の詳細

常陸の社 雲井宮郷造神社
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記事タイトル 常陸の社 雲井宮郷造神社
概要

雲井宮郷造神社(茨城県筑西市倉持928番地鎮座)御祭神左殿 事代主命、比奈良珠命正殿 武甕槌命右殿 大國主命、建御名方命三代実録 従五位下『郷造神』鳥居飯名神社のあと、「雲井宮郷造神社」という名に惹かれてしまい参拝してみました。境内は筑波山の西麓に位置し、西に小貝川、東に桜川に挟…… more まれた台地の上に鎮座しています。一の鳥居には「雲井宮」と刻まれた扁額が掲げられ、看板には『新治國一之宮』と書かれていました。参道境内はとても広くて、参道が延々と伸びています。(当方の見落としだったのかもしれませんが)境内に御由緒などがなかったので、大正九年出版『真壁郡案内』や『常陸国風土記』を中心に本神社について勉強してみました。「真壁郡案内」によると、本神社の御祭神は正殿に鹿島神宮の祭神である武甕槌命、右殿は大国主命と建御名方命、左殿には事代主命、そして毘奈良珠命(比奈良殊命)が祀られているとのことです。随身門比奈良殊命は『常陸国風土記』の総記及び新治郡条の冒頭に次のように登場します。「昔、十代美麻貴の天皇(崇神天皇)の御代に、東方の夷の賊(阿良夫流爾斯母乃・あらぶるにしもの)を討伐しようとして、新治国造の祖先で名を比奈良殊命を(都から)派遣した。命が(東に)やってきて、新たに井戸を掘ったところ、その水が浄らかに流れた。そこで、新たに井戸を治りひらいたことをもって、郡の名前として付けたのである。」また、『国造本紀』新治国造の条には、十三代政務天皇の時代に天穂日命の子孫である美都呂伎命の子・比奈羅布命を国造に定めたとあり、時代は違えど同人とされており、出雲系の一族ではないかと言われています。神社の鎮座地から北へ3キロほど先には葦間山古墳という国造級の権力者が葬られている古墳があり、他にも台畑古墳なども点在しています。拝殿『真壁郡案内』によれば、景行天皇の御代に比奈良殊命が日本武尊東征時の行宮(駐屯地)だった此の地に留まって「雲井宮」を創建して蝦夷討伐のために武神・武甕槌命を祀り、宮職となって祭事を執り行ったとあり、その後新治直一族が祖神・比奈良殊命を祀った社が「郷造社」だったのではないか、とあります。また、村内の四板碑には「天平五年(734年)九月十九日に常陸守藤原麻呂が聖武天皇御願の為に景行天皇の時創建の常陸國区雲井宮の社殿を修造した」という内容の碑文も残されているようです。「蝦夷鹿島雲井宮郷造神社」の扁額但し、神祇志料によると「倉持」という字名から、「倉持は車持にて姓氏録に車持公、上野君同祖、豊城入彦八世孫射狭君之後也」とあることから上下野君の同祖、豊城入彦命の八世孫射狭君の後で、雄略天皇の代に乗輿を供進した車持公に由来があるのでは?ともあります。その後、戦国時代小田氏から尊崇され、小田氏一族の倉持氏が宮司を勤めたとありますが、小田氏没落の後漸く社運の衰微が著しく、慶長年間の際には伊奈忠次が社有地を没収してしまい、僅か三十一石の朱印を有するまでになってしまい、江戸時代元禄年間にはついに郷造神を雲井宮に配祀するに至ったとあります。幣殿・本殿式外諸神 郷造神今真壁郡倉持村にあり(郡郷考、神祇考)按社記新治國造毘那良殊命を祭ると云り、されど倉持の名に據るに「倉持は車持にて姓氏録に車持公、上野君同祖、豊城入彦八世孫射狭君之後也」とあるに由あり。且本郡伊讃郷などあるを思ふに、射狭君を郷造神と祭れるか如し、附て考に備ふ。光孝天皇仁和二年六月丙子、正六位上郷造神に従五位下を授く(三代実録)(神祇志料より)境内社常陸國雲井宮真壁郡大村大字倉持鎮座今の雲井宮郷社神社にして、現に郷社の列に在り。祭神左殿 事代主命、毘奈良珠命正殿 武甕槌命右殿 大國主命、建御名方命景行天皇の御代郷造毘奈良珠命の創建に係り、雲井宮號は平城天皇大同二年十月二十七日蔭子左中辨藤原宗成伊豫親王の事に坐し、常陸に配せられて水守に居り、日夕當社に詣でて恩赦を祈る。後赦されて京に帰るに及び、報恩の為に奉れるものなりと。然れども之を村内に現存する同形同大の四板碑に徴する時は、此記述の作為説たるを知るなり。天平五年九月十九日也常陸守藤原麻呂所建常陸國区雲井宮爲聖武天皇御願也景行天皇創建也謹で按ずるに日本武尊の東征は、専ら帰降を容し不服を誅し、或いは曠野を拓かしめてり田を起し、或は沮洳の地を干拓して水田を作り、時に或は断崖に依りて泉を需め、一は飲料に供し一は灌漑に充て、只管農桑の道を授け聚落の教育を計画せらる。古の井と称するもの即ち是なり。是を櫻川の流域に覓むる時は、羽島の裾輪の田井、本木の醒ヶ井、大国玉の七井、門井の新治井、石田の榊の井、及び此神社附属の垂の井等ありて、常陸風土記の「日本武尊毘奈良殊命に命じて井を穿たしむ。寒水忽ち湧く云々仍て名けて衣手漬國といふ」とあるが如き皆當時の消息を窺ふに足るなり。(當時井は部落発展の源泉なれば水守都を置く。今の筑波郡水守村は垂の井水守部民が分對せるものなることは神社流鏑馬は今に水守に限るを見ても知るべし)。想うに日本武尊が新治筑波の経営は毘奈良殊命、吉備武彦、大伴部日蓮等の手に成れるものにして、去るに臨み毘奈良殊命を止めて専ら郷造の事に當らしむ。後二十餘年成務の朝新治國を置くに及び、命を國造に任したるものの如し。而して武尊東征四年の間駐屯し給ふの地幾多あるべきに、唯だ甲斐の酒折宮のみ連歌によりて著はるれども、駐屯の地何れか宮にあらざらん。雲井宮は即ち武尊駐剳の遺跡にして、正殿武甕槌命を祀れるが如き、東方未開の民に其帰郷を示し給へる深慮の程を窺ふべきなり。社殿國造毘奈良殊命は大命を奉じてより、粉骨砕身其任に就き、子孫永く相承けて民治を司りしかば。薨後祭祀の禮を享け、郷造神として庿職し、延暦九年新治直大直外従五位下に叙せられ、光孝天皇仁和二年六月郷造神も従五位下の叙せられた。而して其社殿の迹今審かならずと雖も、元禄の古圓に雲井宮の摂社中大なるもの一あり。雲井宮、郷造神共に新治氏の奉薦する所にして、其創立の動機も相同じきより考ふれば、同一境内に在ること又怪しむに足らざるなり。爾来星霜千餘年、年序益々降るに従ひ、政廳の移轉、交通の便否、民情の推移等諸般の事情の下に漸く社有の産を減じ、修復の資に窮するに至れり。就中戦国時代に及びては、武備是れ急にして祭典をさへ缺くに至れるもの所在皆然り。幸に応永中小田氏の族、倉持氏宮司を兼ねるに及び、小田氏の奉斎殊に厚かりしと雖も、小田氏没落の後漸く社運の衰微を来し、加ふるに慶長改革の際伊奈忠次社有地没収の事あり、僅かに三十一石の朱印を有するに過ぎざりしかば、元禄後には両社並立の支え難き悲運に陥り、遂に郷造神を雲井宮に配祀するに至れり。是れ即ち両祭神を一體と誤解し、雲井宮の正縁起を失ひ、唯だ三代実録の十五文字を全科玉條と崇信し、現在の社記及び社名を成すに至れる所似なり。之を以て是を見るときは、雲井宮は板碑が示すが如く、景行天皇五十三年日本武尊の薨逝を悲しみ、其遺跡を弔はんがため車駕東巡上総に及ばせ給ふ時、勅願の創建に係り、天平中聖武天皇の修造を加え縁起碑を建てて其遺烈を彰明し給ふ所にして、神澤二千歳威霊赫灼として東陲を照す。其宮號を復し、社格を昇進し、以て武尊景行政務光孝四聖の偉蹟を顕はさんこと、亦た正に大正紀元の一大祥事ならずや。(大正九年出版「真壁郡案内」より)境内色々調べてみると、古代から続く新治郡の歴史が凝縮されたお社のように感じました。新治郡・真壁郡の延喜式内社(稲田神社・鴨大神御子神主玉神社・大国主神社・佐志能神社)や近隣の筑波山含めて考慮すると色々と繋がりが出てきておもしろいかもしれません。 close

常陸の社 雲井宮郷造神社
サイト名 Journey To The End
タグ 神社
投稿日時 2019-10-24 02:00:05

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