｢弥勒菩薩画像集｣よりこの日、春の一般公開がされていた霊宝館も観覧させてもらいました。この年の春の公開は５月22日まででした。　仁和寺創建当初の本尊と考えられている国宝の阿弥陀如来及び両脇侍像、同じく国宝の高倉天皇宸翰(しんかん)消息など五十数点の名宝が展示されていましたが、その…… more 中に前から本物を観てみたいと思っていた重要文化財の｢弥勒菩薩画像集｣(平安時代)が元興寺金堂の弥勒像の頁を開いて展示されていて感動しました。　元興寺の弥勒菩薩像は平城京に移転された時に金堂の本尊として造立されたと考えられますが、室町時代に失われ、その像容を知る手がかりは、この｢弥勒菩薩画像集｣に描かれている画像と平安時代後期に南都を巡礼した大江親通の著した｢七大寺日記｣(1106年に巡礼)｢七大寺巡礼私記｣(1140年に巡礼)の記載と考えられています。　しかし、大江親通は、｢本朝新修往生伝｣に収められている卒伝を読むと、学者ではなくて、今でいうなら新興宗教の教祖のような人だったと想像され、その著作｢一切設利羅集｣を読む限りでは、自分で論述する能力は余り無かったと考えられます。｢七大寺日記｣の弥勒像に関する記事は最初の巡礼に際して参考にした寛仁二年(1018)の｢定心阿闍梨巡礼記｣の丸写しの可能性が高いと思います。また｢七大寺巡礼私記｣の弥勒像に関する記事は｢大和寺集記｣や聖徳太子信仰関連の諸書に遺された｢巡礼記｣の逸文と比較して考えると、康平七年(1064)の｢巡礼記｣を丸写しにしたものだと推測出来ます。そして康平七年の｢巡礼記｣は仁和寺の学僧で｢十巻抄｣の著者と考えられている勝定房阿闍梨恵什が、まだ伝法潅頂を受ける前の若い頃、最朝と名乗っていた時に南都を巡礼し著したものだと私は考えています。　今回、仁和寺を訪ねたいと思った大きな動機は勝定房阿闍梨恵什の暮した寺の雰囲気を自分の目で確かめたいという事でした。　仁和寺は、応仁の乱で全焼し、それ以前の状況は判りませんが、広い境内を歩いていると、平安時代に、そこに暮らしていた人に思いを馳せる事が出来ました。 close

【2011 年４月の記事の修正】はじめての仁和寺(京都市)で「弥勒菩薩画像集」を拝見