前回は、茅の輪くぐりや胎内くぐりなど、穴を潜るという宗教的観念についての記事でした。これらは本来、大地（地母神）の子宮から再生するという意味だと思います。一方、穴ではなく狭い隙間を通り抜けるという巨岩もしばしば見かけます。典型的なのが、滋賀県東近江市小脇町の太郎坊宮です。この太郎…… more 坊山は赤神山とも言い、大昔から「神様の山」「天狗が住む山」「修験道修行の霊山」とされてきました。祭神は「正哉吾勝勝速日天忍穂耳大神」で、勝利と幸福を授ける神様として信仰されています。麓から740段余りの長くて急な階段を上ると、本殿の手前に夫婦岩がありました。岩と岩の間の幅は、わずか80cmしかありません。良い心の持ち主が、願い事を念じて岩の間を通ると願い事が叶い、悪い心の持ち主が通ると、岩にはさまれてしまうといわれています。神社的には神様のお力によって押し開かれたと伝わる大岩で、教育委員会的には節理と風化が成因とされます。この「近江高天原　夫婦岩」という表示を見ると、単なる割れ目ではなく、神話的な聖域であることがわかります。しかし以前にも書きましたが、この巨岩の割れ目は伊勢の夫婦岩と一緒で、ほぼ夏至の朝日が昇る方向です。単なる偶然とは思えません。私はこれを巨石遺構の一種だと勝手に思っています。　　☆次に、太郎坊宮によく似ているのが、山梨県山中湖村平野、標高1413mの石割山8合目付近にある石割神社です。ご神体の巨岩は、いったいどんな高度な技術をつかったものなのか、すっぱりと見事にくり抜かれています。そしてここでは、ご利益を求めて登山客がぐるぐる三周している光景を見る事ができます。　　☆これは、和歌山県田辺市の秋葉神社です。ここは、田畑と果樹園と山林の織り成す何気ない風景の中に、真っ二つに割れた岩が突然現れます。「なんでこんなところにこんなものが・・・」と驚く立地でした。この割れ目を通り抜けると、秋葉三尺坊大権現をお祀りした本殿です。　　☆いままでは神社でしたが、原始信仰・巨石信仰を基盤とするらしいお寺にも、同種の岩はありました。岐阜県加茂郡白川町切井の山中にある隠居山観音へ通じる岩がこれです。　　☆これらをなぜ改めて載せたかと言うと、こんな研究論文を見つけたからです。【題名】『モンゴル秘史』における石のシンボリズム　（Roks Symborism in The Secret History of the Mongols）【著者】ボルジギン・オルトナスト（Borjigin Urtnast）この中には、詳しい信仰事例をあげて、こんなことが書いてありました。「モンゴルでは巨岩の割れ目の狭い空間を通り抜け、心身の穢れを祓い清め、身を潔白する習慣が今も残っている」さらに別の所では「モンゴル人は石に対する独自の認識、考えが芽生え、石を神聖視する、石を信仰するなどの石の文化的特徴が明白となり、モンゴル文化の中に特殊性を持つ石の文化が形成された」これはほんの一部なのですが、「モンゴル」を「日本」に変えてもまったく違和感はありません。私は卑弥呼の「鬼道」がモンゴル起源のシャーマニズムではないかと思う人間ですが、きわめて日本的な雰囲気の「磐座」や「磐境」などもまた、広域アジア的な視点から見る事も大切ではないでしょうか。（インドネシア・バリ島の割門。Wikipediaより）三つクリックしていただくと、ネタ探しの元気が出ます。よろしくお願いいたします(^_^)/~にほんブログ村神社・仏閣ランキング close

太郎坊宮や石割神社の巨大割目とモンゴル・バリ島との不思議な関係