大阪に単身赴任するわたしにとっては、今日は近場の旅、近鉄大阪線・藤井寺駅から始まるものだ。 ただし、あなどるなかれ、近場といっても、この旅、毎月十八日のみに仏像を開帳する三つの寺、しかもそれらはすべて、国宝・重文級という、ゴールデンルートを巡るものであり、わたしの胸は高まるばかり…… more なのである。 駅に降り立ち、昔ながらの小さな商店街を抜け、歩くこと約五分、一つ目の寺が現れる。 商店街の先に寺がある、というのが、いかにも大阪的だ。 真言宗紫雲山・葛井寺。 七世紀代に、百済からの渡来人、葛井氏の氏寺として創建されたが、その後、神亀二年（七二五）、聖武天皇の発願により、十一面観音の開眼が行基上人の手で行われた。 ちなみに、この行基上人、日本仏教の歴史における「有名人」である。 奈良時代、国家鎮護の方針のもと、国が定める寺院を通じて布教活動をしなければならなかった時代に、直接民衆と接し、教えを説くとともに、寺院や道場、溜池や溝、困窮者のための施設などを多数造り上げた。 国の方針に従わない、ということで、一時期弾圧されたこともあったが、民衆の大きな支持をバックに活動を続け、最終的には国にも認められ、国家鎮護の象徴たる東大寺大仏の造立責任者となり、その任を成し遂げた人。偉業を聞くにつけ （仏に仕える身とはいえ、この人を突き動かしたパワーとは、いったい何だったんだろう…） と感嘆しないではいられない。 出店が並ぶ中、小さな山門を潜って中に入るが、この門は四脚門と呼ばれ、慶長六年（一六〇一）に豊臣秀頼によって再興されたものだ（重文）。 ＜四脚門＞ 少し歩くと、やがて左手に本堂が見えてくるが、ここで右手のほうに、立派な正門（南大門）があることに気付き、あらためて、そちらから入りなおすことにする。 これはわたしの性分。「正門から入らず、通用門から中に入る」とか、「一の鳥居、二の鳥居を経ずに、三の鳥居から中に入る」とかいうのが、どうも落ち着かない…。 さて、この南大門、朱色が褪せて、ピンク色と化しており、建ってからかなりの年月を経たものに見えるが、寛政十二年（一八〇〇）の竣工ということで、新しいもの。 新しければ新しいほど 「がっかりする…」 のが、寺社巡りの際の常ではあるが、この門、ななか風格がある。 ＜南大門と仁王像＞ 【冬】 大阪・藤井寺 「十八日・ゴールデンルートを歩く」②　へ続く close

【冬】 大阪・藤井寺 「十八日・ゴールデンルートを歩く」①