葛井寺を出て、南の方面へ歩くこと約十五分、 訪れたのは、真言宗青龍山・野中寺（やちゅうじ）だ。 聖徳太子の命を受けた蘇我馬子が建立したとされる古刹であり、太子ゆかりの寺として、別名「中之太子」と呼ばれている。 ＜野中寺 朱の山門＞ ＜山門からの薬師堂＞ ちなみに、大阪には…… more 、上・中・下の太子がある。 「上之太子」は大阪南河内郡・叡福寺、 「下之太子」は大阪八尾市・大聖勝軍寺だ。 ＜叡福寺 南大門＞ ＜叡福寺 金堂＞ ＜叡福寺 聖徳太子御廟＞ ＜大聖勝軍寺＞ 野中寺創建時の建物たちは、南北朝時代までの間に兵火等により焼失、江戸時代に再建されたとされるが、ここには「さかのぼること遥か」の仏像が安置されている（毎月十八日のみ開帳）。 〔弥勒菩薩半跏思惟像〕（白鳳・重文） がそれだ。 像の台座に刻まれた銘文から、天智天皇五年（六六六）の作とされる。 ＜野中寺塔跡＞ 大化の改新以降、平城京遷都までの約七十年弱の間（七世紀後半～八世紀初）の頃を「白鳳」と称するが、この時期、飛鳥の名残を持ちながらも新しいタイプの仏像が登場してくる。 ・細面の顔立ちから、ややふっくらとしたものになる ・左右対称の直線的な像形が曲線を持つものとなる ・アルカイック・スマイルが消え、やや厳かな表情となる ・胴長短足にて頭部が大きい、幼児的な愛らしい体型となる ・観音像が頭の正面、両側面に大きな宝冠を持つもの（三面頭飾）となる というような特徴を持つが、総じて、飛鳥仏に比し、自由な作風を感じさせるものとなってくるのである。 野中寺の弥勒菩薩、以上の特徴をしっかり備えたものだ。 像高はわずか十八・五センチのものではあるが、寺務所から入った座敷で、畳の上に置かれた（普段は厳重に保管されていて、開帳の日だけ出してくるとのこと）像を、わずか数センチの距離感で、間近に観ることができる。 至福の時間を過ごすとは、まさにこれだ。 ずっと観ていたい気持ちで一杯だが、なにぶんにも小さな座敷、次の拝観者が待っている。 あまり独り占めすることもかなわず、その場を離れることとしたが、 （名残惜しいくらいがちょうどよい…） のだ。 御朱印は〔中之太子〕 ありがたく頂戴する。 【冬】大阪・藤井寺 「十八日・ゴールデンルートを歩く」④　へ続く close

【冬】 大阪・藤井寺 「十八日・ゴールデンルートを歩く」③