ジェームスディーンやジャニーズに例える人もいて、その上ファンクラブさえ存在する仏像界のスーパースターはどなた様でしょうか？その答えは、今日のテーマである興福寺の阿修羅像です。昨日、奈良の興福寺国宝館に行ってきました。まずは興福寺です。そして、国宝館の看板。阿修羅人気はすごいもので…… more 、「阿修羅ファンクラブ」まであり、その 会則はこれ。一、阿修羅を深く愛すべし一、阿修羅を1300年護り続ける興福寺を篤く敬うべし一、特製会員証を常に携帯すべし一、会員を見つけたら声をかけ、阿修羅を語るべし一、会員の輪を広げるよう努めるべし。さらに、高見沢俊彦さんが歌う「愛の偶像（ラブ・アイドル）」というテーマソングもあります。アルフィーファンや高見沢ファンも、そうとう入っておられるのでしょうね(^_^)/~さて昨日、この阿修羅像を初めて実物で見て、なんとも表現できない不思議なリアル感に衝撃を受けました。単なる仏像という範疇を超えています。さらに、ものすごく気になる点を発見。それは、向かって左の目に、くっきりと白いハイライトが点のように入っているのです。よくご覧ください。仏像の専門家の方々は、おそらく少女アニメや「萌え顔」のキャラクターに関心がないだろうと勝手に推測するのですが、これらの瞳には必ずハイライトが入っています。たとえばこんな感じです。(「お絵かき図鑑」ブログさまより)さらに美少女戦士セーラームーンともなると、もはや瞳の半分が白いハイライトで占められます。前出の「お絵かき図鑑」ブログ様には、美少女顔の書き方についてこう書かれています。目はキャラクターの命です黒目とハイライトの効果で、女の子らしい目を表現することができます。大きく円状に描いた黒目部分にハイライトを入れると、目のキラキラ感がアップして、より女性らしくなります。　　☆これらを、子どもとオタク趣味の輩だけに流行した美少女アニメと侮ってはいけません。セーラームーンの漫画単行本の発行部数は2004年時点で約1200万部。アメリカで2011年9月13日に発売された新装版第1巻が9月、10月の2カ月連続で売上1位となるなど、世界に誇る日本アニメ文化の草分けなのです。なぜ美少女の瞳にハイライトが入るのか、心理学や社会学、あるいは脳科学の分野で研究されるべき文化現象だと私は思っています。一方、花王株式会社・メイクアップ研究所の西野顕博士によると、瞳に光が映り込んでいることを「キャッチライト」といって、写真などでは必ず瞳にキャッチライトを入れるように撮影するそうです。そして、実際にメイクをしたときに瞳の輝きがどう増すのかどうか実測してみたそうです。すると、暗い部分は暗く、明るい部分はより明るいという「明暗のばらつき」があったほうが、輝きがより増すとわかったとか。アイラッシュカーラー、マスカラで瞳の輝きが変化するという写真です。より詳しいアンケート調査の結果では、目が大きい写真よりも、瞳の輝きが強い写真のほうが「魅力的だ」と答えた人の割合が高いという結果が出ました。また、サンプルの写真では瞳以外の部位を加工していなかったのにもかかわらず、瞳が輝いていた場合に「肌が明るい」「立体感がある」「ツヤがある」「彫りが深い」などの回答をする人が続出したそうです。「瞳の輝きは顔立ちをポジティブに変える！」が結論なのだとか。阿修羅像に戻ります。もし阿修羅像の瞳の白いハイライトが、「瞳の輝きは顔立ちをポジティブに変える！」という経験的原則を踏まえて制作されていたとしたら・・・　　☆NHK・「阿修羅」興福寺阿修羅像1300年の新事実(2017年3月23日放送)は、こんな内容でした。・阿修羅像は、聖武天皇の后である光明皇后が作らせた。・光明皇后は人々に尽くすことを第一に考えていた優しい人物だった。・光明皇后は息子を1歳未満で亡くし、6年後に仏像を作らせている。・阿修羅像には、亡き息子の面影、願ってやまなかった成長を仏像に託した。光明皇后とは、藤原不比等と県犬養橘三千代の娘で、皇族以外から皇后となった初めての例でした。周囲の敵意や悪口は相当あったでしょう。現代の例を挙げるならば、今の美智子皇后は日清製粉の社長令嬢でお嬢様なのですが、皇室に嫁いだ当初は、「粉屋の娘」と陰口を言われたのは周知の事実です。光明皇后は、立派な皇后であることを終始要求された、ある意味気の毒な方だったと推測します。そして何よりも、世継ぎとすべき男子を生むことが求められました。神亀4年（727年）、基王が生まれた時、待望の男子を得た聖武天皇の喜びはひとしおで、生後わずか32日で皇太子に立てるという異例の措置が取られます。ところがその基王は、あろうことか生後1年に満たずに夭逝するのです。これらの状況を考える時、「阿修羅像には、亡き息子の面影、願ってやまなかった成長を仏像に託した」というのは、極めて納得のいく推論だと思います。　　☆ここからは私の妄想的フィクションです。病床に伏せる幼い息子が何とか回復してほしいという、母として、皇后としての振り絞るような願いの毎日だったでしょう。そして、毎日愛おしく覗き込む基王の瞳が開いた時、そこにはつぶらな瞳に、うっすら差し込む日光や祈祷の炎やろうそくの明かりが反射していたのではないか。そのハイライトが、光明皇后の我が子に対する愛情を倍加させ、亡くなった後でも瞼に浮かぶ情景だったのではと思います。余談ですが、和辻哲郎は『古寺巡礼』において「ある表情もしくは特徴を鋭く捕えて、しかも誇張に流れない、巧妙な技巧と微妙な手練」が人を驚嘆せしめると、阿修羅像の仏師を表しました。実は古代インド神話における阿修羅王は、帝釈天を相手にして荒々しい闘いを繰り返す神でした。後に仏法の守護神になったとはいえ、戦う神仏でもありました。光明皇后の悲しみを知っている優秀な仏師は、亡くなった基王が阿修羅としてこの世に再生し、長屋王の怨霊をはじめとする抵抗勢力に一歩も譲らす、最後まで戦いを挑み続けることを願って彫ったのでしょう。そして、生ける基王の証しとして、普通の仏像にはない光の輝きを一点、瞳に加えたのだと思います。このわずか一点の小さなハイライトによって、基王阿修羅が生き生きとこの世に蘇ったことを、光明皇后は感涙の涙で迎えたと思います。　　　　(猿沢の池に映る興福寺)さて、以上のような妄想的推理が当たっているかどうかは別にして、原始神道の巨石神像にも、この「ハイライト」が利用されているのではないかと思う事例があります。「いくらなんでもそれはありえない」と言われるでしょうが、榛名神社の巨大なご神体、御姿岩にも、瞳とハイライトがありました。それについて次回は推理したいと思います。(続く)自転車操業のためこのブログがいつまで続くか不明ですが、三つクリックしていただくと大変励みになります。よろしくお願いいたします(^_^)/~にほんブログ村神社・仏閣ランキング close

興福寺の阿修羅像とセーラームーン・光明皇后が託したものとは？