葛井寺(藤井寺市) ・市名の由来ともなった西国五番観音霊場の詳細

葛井寺(藤井寺市) ・市名の由来ともなった西国五番観音霊場
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記事タイトル 葛井寺(藤井寺市) ・市名の由来ともなった西国五番観音霊場
概要

紫雲山 葛井寺2019年4月訪問葛井寺(ふじいでら)は大阪府藤井寺市藤井寺にある寺院です。京都市右京区にある仁和寺を総本山とする真言宗御室派の寺院で、山号は紫雲山。本尊である国宝の千手千眼観世音菩薩坐像は唐招提寺、三十三間堂とともに三観音として有名ですが、西国三十三ヶ所第五番札所…… more としても南河内屈指の知名度を誇ります。葛井寺(藤井寺市)現在では「藤井寺駅の駅前にある街中のお寺」という印象の葛井寺ですが、「藤井寺」という地名の由来となった、ということからも古くから周辺の人々の生活に深くかかわってきたことが窺えます。歴史と概要葛井寺の正確な創建年は不明ですが、寺伝によると、神亀2年(725年)に第45代聖武天皇の勅願で行基が創建し、紫雲山金剛琳寺(古子山葛井寺)の勅号を得ました。本尊の千手観世音菩薩像はこの時聖武天皇により奉納されたとされています。また、それ以前の7世紀ごろに、古代氏族葛井氏(藤井連)の氏寺として建立された寺院が始まりとも言われています。この葛井連は、百済辰孫王(しんそんおう)の末裔である船氏や津氏とならぶ白猪(しらい)氏が養老4年(720年)に改姓しとものとされています。ちなみに、同じく河内国発祥の物部氏流葛井連という別氏族もいました。南大門前の由緒書平安時代初期、第51代平城(へいぜい)天皇の皇子である阿保(あぼ)親王が葛井寺を再興したとされていますが、この阿保親王の母は藤井氏の出身とされています。また、親王の5男は歌人としても有名な在原業平です。その後、伽藍は荒廃しますが、永長元年(1096年)に大和国賀留の里(現在の奈良県橿原市?)の住人である藤井安基が、伽藍を復旧し美観をよみがえらせたので、その苗字から「藤井寺」とも称されるようになりました。他にも「剛琳寺」と呼ばれることもあったようです。最盛期のころの葛井寺は、2km四方の境内に東西2つの三重塔をもつ薬師寺式伽藍配置であっことが、当寺に所蔵されている「葛井寺参詣曼荼羅」に描かれています。四脚門(西門)前の説明板南北朝時代の(南朝)正平2年・(北朝)貞和3年(1347年)には、楠木正成の嫡男、楠木正行(まさつら)が数倍する北朝方の細川顕氏の軍を破った「藤井寺合戦」の舞台となりました。この時、正行は大般若経600巻を書写して守刀一振と「非理法権天」の菊水旗を葛井寺に奉納し戦勝祈願を行ったといわれています。四脚門(西門)前の由緒書室町時代の明応2年(1493年)に起こった明応の政変での兵火と、永正7年(1510年)の永正地震で伽藍堂塔を失いましたが、諸国に大勧進して復旧に努めました。当寺は、桃山時代の慶長6年(1601年)に豊臣秀頼、さらにその後の徳川家代々によって修復が行われました。境内多くの人が利用する近鉄の藤井寺駅から参拝する場合、もっとも近いのは西側の四脚門ですが、やはり正面である南大門から参拝しました。南大門へ続く参道南大門から南に延びる参道は、南河内では貴重な酒蔵である藤本雅一酒造醸や、藤井寺市立生涯学習センター(アイセル シュラホール)前を通り、仲哀天皇陵(岡ミサンザイ古墳)の東側まで直線を保っています。南大門(2017年12月)南大門は、寛政2年(1790年)頃に完成したとされる三間一戸の楼門で、入母屋造本瓦葺となっており、左右には仁王像が配されています。南大門前葛井寺は西国三十三所五番札所というだけでなく、河内西国三十三所特別客番、神仏霊場巡拝の道五十九番といった霊場にもなっています。境内(2018年4月)南大門をくぐると、正面50mほど先には本堂、その手前に紫雲石灯籠(レプリカ)、そして左右にもいくつかのお堂などが見えます。第65代天皇であった花山法皇が、葛井寺を参拝した時に「参るより頼みをかくる葛井寺花のうてなに紫の雲まいる」と詠まれると、本尊の眉間から紫煙が出て、聖武天皇寄贈とされる石灯籠までたなびいたという伝説もあります。なお、この歌は当寺の御詠歌ともなりました。南大門から本堂を向いて右手、最も手前にあるのが「烏枢沙摩閣(うすさまかく)」と呼ばれるお手洗いです。烏枢沙摩明王は不浄を浄化するとされ、密教や禅宗等の寺院ではトイレに祀られることが多いそうです。弁天池烏枢沙摩閣の左側には弁天池があり、中央に弁天様が祀られ、手前には赤い鳥居が並んでいます。ヴィクリディタサマデ・キリク弁天池の本堂寄りには「ヴィクリディタサマデ・キリク」という全面ガラス張りのお茶処があります。こちらの名物は本吉野の葛を使った葛井もち(くずもち)でスイーツ巡礼でも人気のカフェだそうです。お土産として持ち帰りも可。修行大師像ヴィクリディタサマデ・キリクの左隣には修行大師像。石塔など目立ちにくいですが、修行大師像の裏には十三重石塔や宝篋印塔、その他石碑や塔心礎のような石などが多数あります。大師堂修行大師像からさらに本堂寄りに建っているのが大師堂です。専心龍乗観世音菩薩像大師堂の左には専心龍乗観世音菩薩像という龍に乗った観音様の像が建っています。東門専心龍乗観世音菩薩像と釣鐘堂の間には東門がある他、この付近には三つに分かれた葉が特徴の「三鈷の松」がありますが、これは楠木正成が戦勝祈願をした時に旗を掛けたとされる「旗掛けの松」と呼ばれています。三鈷の松は高野山をはじめ全国にありますが、南河内では河南町の弘川寺にもあります。釣鐘堂東門と本堂の間には釣鐘堂。本堂(2018年4月)そして、鐘楼の北にあるのが本尊である国宝の千手観音像が祀られる本堂です。延享元年(1744年)に建設が始まったとされ、宝暦3年(1753年)上棟の棟札がありますが、竣工は安永5年(1776年)と30余年に及ぶ難事業の末に完成したそうです。蟇股(かえるまた)や頭貫(かしらぬき)といった豪華な彫刻が施されています。本尊は乾漆千手観音坐像、または十一面千手千眼観世音菩薩像とも呼ばれ、麻布を漆で貼り重ねて像の形を造る脱活乾漆(だっかつかんしつ)造りという技法で製作されています。春季大法会時の御開帳像高は130cmあり、脇手は持物をもつ大手38本と小手1001本(右500本、左501本)で、合掌手2本を合わせて1041本ある文字通りの千手観音です。日本では、彫像の千手観音像は40本(合掌手2本を合わせて42本)の手で「千手」を表すものが多いのですが、本像のように実際に千本の手を表現する千手観音像は非常に珍しいものです(本像の他には唐招提寺金堂像など)。像が作られた当時は全ての脇手に墨描で眼が表されていたと考えられています。また、本像は日本に現存する千手観音像としては最古級のもので、秘仏のため平常は厨子の扉が閉められていますが、縁日である毎月18日の観音会と8月9日の千日まいりの日にだけ特別に開帳されます。昭和27年(1952年)11月に国宝指定されました。この千手観音坐像は奈良時代の作品であること、また境内から奈良時代の瓦が出土することなどから、当寺の創建は奈良時代(8世紀頃)に遡ることは間違いないと考えられています。護摩堂本堂に向かって左に位置するのが護摩堂です。こちらは本尊の不動明王を中心に、千手観音と役行者を左右に安置しています。葛井寺は葛城山の西門といわれ、護摩堂は大峰山入峯(にゅうぶ=大峯で修行すること)にあたっての最初の行場として修験者達の信仰を集めてきたそうです。阿弥陀堂本堂の手前、大師堂の向かいには阿弥陀堂(阿弥陀二十五菩薩堂)があり、こちらには阿弥陀如来立像を中心として、観音、勢至など二十五の菩薩像を安置しています。このお堂は東向きに建っているので、諸尊の立ち並ぶ西方浄土からの来迎を表したかのようになっています。また、阿弥陀堂の手前右手には出世地蔵大菩薩が立っています。四脚門(2018年4月)本堂から左手(西)に進むと、前出の護摩堂の他に弘法大師手掘りの井戸、手水舎、西山墓地などがあり、突き当りが西門にあたる四脚門となります。この四脚門は、慶長6年(1601年)に豊臣秀頼が寄進したもので、かつては南大門だったそうです。桃山時代の様式をよく伝える葛井寺で現存する最古の建物で、重要文化財に指定されています。西門の外にある地蔵堂?(2018年4月)四脚門をくぐって境内から出ると、藤井寺一番街(西門筋商店街)の道に出ます。この道はかつて「大坂道」と呼ばれた街道で、北は平野(現大阪市平野)を通って大坂の町へ、南は日本最古の官道として知られる竹内街道につながっていました。このことから、藤井寺はこの道を中心に栄えて行きました。また、昔はこの街道に沿って葛井寺の石垣があったそうです。西国三十三箇所お砂踏み葛井寺の境内の南西部には、西国三十三カ所を一度に巡礼できるお砂踏み場があります。お砂踏み場お砂踏みとは、四国八十八ヶ所霊場各札所それぞれの砂を集め、その「お砂」を踏みながらお参りすることで、実際に遍路をしたことと同じご利益を授かることが出来ると考えられています。年中行事葛井寺では様々な年中行事が行われていますが、主なものをあげると...毎月18日の観音会では、本尊である千手観音像が開帳されます。1月18日は特に初観音会と称されます。春季大法会時の境内4月18日の春季大法会では、本尊御開帳に加え、法要や大護摩祈祷、さらには餅まきまで行われ、誰でも自由に参拝できます。藤棚(紫)(2018年4月)4月~5月にかけての「藤まつり」の時期は、葛井寺の境内に多数の藤の花が咲き誇り甘い香りを漂わせます。特にお砂踏み場周辺は大きな藤棚が数多く設けられ見事な景観となっています。なお、藤まつりの期間はその年の気候により異なり、期間中は西門と東門が閉鎖され南大門のみ出入りできるようになります。藤棚(白)(2018年4月)8月9日には「千日参り」が行われ、この日に参詣すると四万六千日の功徳が得られるとされ、露店が出るなど大変な賑わいとなります。また、本尊の千手観音像も特別に開帳されます。●西国五番札所紫雲山葛井寺ホームページ →http://www.fujiidera-temple.or.jp/index.htmlアクセス近鉄南大阪線「藤井寺」駅南口から東(土師ノ里方面)に70mほど進み、踏み切りの前を右に曲がり藤井寺一番街という商店街のアーケードの下を通ると、約150mで西門に着きます。現在、一般参拝者用の駐車場は無いので(祈祷・回向の方は東門前の無料駐車場があります)、藤井寺駅の南側、辛國神社北側周辺にいくつかあるコインパーキングを利用するのが最も近いでしょう。駅の南側へは、葛井寺の東を走る府道186号大阪羽曳野線の踏み切り南側から西に約600m、または府道31号堺羽曳野線「野中寺」交差点から北に約1.5kmです。かつては、府道186号沿いのNTT西日本藤井寺ビル南側に有料の駐車場がありましたが現在は使えません。平成29年(2017年)4月1日以降、観光バスなどは1kmほど北にある津堂城山古墳に近い市営ふじみ緑地公園駐車場の利用を案内されています。拝観は無料ですが、毎月18日のご本尊開扉日のみ500円の拝観料がかかります。Fujiidera Temple(Fujiidera City,Osaka Prefecture) close

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タグ お寺 大阪府 寺院 札所 藤井寺市
投稿日時 2019-04-27 00:41:10

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