昨日の続編です。八世紀に編纂された『出雲国風土記』に載る朝山神社。境内の「朝山十九社」には、出雲の神在月に集まった全国の神々が、まず訪れる場所だという伝承があります。神無月や神在月の概念が後世的なものであるにせよ、風土記に載る重要な古社に伝わる伝承なら、ここが何かしら特別な聖地性…… more を持つ土地であるのは確かでしょうね。その「朝山」の地名は、大国主が毎朝、この地のお姫様のところに通ったので朝山という地名になったと、出雲国風土記にその由来が記されています。さらに、大国主にゆかりの六つの神山があるとも書かれています。どうもこのあたりは、神々が集う出雲の中でも、かなり特別なエリアのようです。では、風土記に「六神山」があると記される朝山の里とは、いったいどんなところなのでしょうか？　　☆出雲市中心部から国道１８４号線をしばらく南下すると、山陰自動車道の高架が岩山に飲み込まれるような光景に出合います。山の上から見るとこんな感じです。国道から見ると、山陰自動車道の高架の彼方にも、別の岩山がそびえています。この周辺が、朝山地区なのです。まずは昨日も紹介した、「六神山」のひとつ「陰山」にある岩根寺を目指します。岩根寺バス停を過ぎたところで右折し、田畑の間をゆっくり進むと、未舗装ではあるものの結構広い駐車場に到着です。そのとき駐車していたのは、私たちの車だけでした。川の向こうに、片面が絶壁の山と、小さなお堂が見えました。これが岩根寺です。のどかな川にかかる橋を渡ると、まるで巨人が荒々しく削ったような壁面が、リアルに見えてきました。手前には、不動明王さんの石像。小さいと思っていたお堂も、なかなかしっかりとした大きさです。これは、ノウゼンカズラの根が岩肌をはい上がっているのだそうです。横から見ると、岩壁が少しオーバーハング気味にせり出しているのが分かります。日本の伝統的な聖地景観のひとつです。浄土宗『神朝山岩根寺』は、かつて塩冶町の天応山神門派に属する寺で、出雲巡礼五番の札所でした。しかし明治初期の廃仏毀釈運動の折に廃寺となり、本尊である十一面観音菩薩は塩冶町神門寺に移されました。その後、建物も明治5年に取り壊されましたが、明治22年に信徒の強い願いにより、現在のけやき造りのお堂が建てられます。このお堂も信徒の皆様も、苦難の道を歩んでこられたのですね。日本の聖地景観を見事に体現するこのお寺を、信徒の意向を無視して破壊するとは、まさにバチあたりな廃仏行政です(>_ close

岩根寺の奇観・観光客の知らない素敵な出雲を案内します！　その②