日本庭園の組石の起源は、磐座や磐境など、古い神社信仰にかかわる岩石に遡るとされます。とくに私が納得するのは、日本庭園で最も一般的な岩組みのひとつである「三尊石組」です。（法隆寺金堂　釈迦三尊像等・ウィキペディアより）この形式の仏像が多いために名づけられたのでしょうが、原始神道にも…… more このような形式の磐座があります。上は、島根県雲南市大東町須賀に鎮座する須我神社の奥の院磐座です。。由緒にはこう書かれます。『古事記』によれば、須佐之男命は八岐大蛇を退治した後、妻の稲田比売命とともに住む土地を探し、当地に来て「吾此地に来て、我が御心すがすがし」として「須賀」と命名し、そこに宮殿を建てて鎮まった。これが日本初の宮殿ということで「日本初之宮」と呼ばれる。またこの宮を包むようにして美しい雲が立ち上がるのを見て、須佐之男命が『八雲立つ　出雲八重垣　妻ごみに　八重垣つくる　その八重垣を』と歌を詠んだことから、須賀の地は和歌発祥の地ともいわれている。そしてこの和歌にある「出雲」が、出雲国の名前の起源となった。歴史的に「日本初の宮殿」かどうかは諸説あるのでしょうが、きわめて古い信仰であることはまちがいありません。日本庭園における「三尊石組」の様式は、間接的であれこのような古代磐座文化に源流があると考えることができます。まあぶっちゃけた話、オリンピックの表彰台にしても、階段のような並び方でなく、金メダルの中央が高くなっている三尊形式ですね。このようなバランス感覚や美的感覚が、原始神道の時代からあったということであれば、誰でも納得されると思います。以下付け加えておきます。三尊石組は日本庭園における石組の基本である。平安時代に著された『作庭記』には「石をたつるに三尊仏の石はたち、品文字の石はふす常事也」とあり、三尊石組が古くから用いられてきたことを物語っている。金閣寺や銀閣寺の石組の手本となった西芳寺の霞形中島の三尊石が三尊石組の古い例として名高い。(「庭石と組石」　昭和４０年　加島書店)『作庭記』は平安時代に書かれた日本最古の庭園書ですが、三尊仏の立石を、まっすぐに寝殿にむけてはならない。すこし他の方角に向けるのである。これを犯せば不吉である。というような記述もあり、庭石を日本古来の霊的なモノとする意識がうかがえます。 　　☆ところが、これらと全く次元が違うと思われる豪壮な庭園があるのです。その一つが、和歌山県紀の川市の粉河寺（こかわでら）です。この粉河寺は、平安時代には朝廷や貴族の保護を得て栄え、清少納言の『枕草子』194段に「寺は壺坂、笠置、法輪（中略）石山、粉川、志賀」とあるほど有名な観音霊場です。そしてこの境内の中門から、約3メートルの高さの石段を経て本堂に至る両翼に、土留めを兼ねた石組の庭園があります。手法からは桃山時代の豪華な作風が如実にあらわれているとされ、名庭園として名高いのですが、「他に類例がない」とされています。こういった、広い庭園の奥に落ちついた三尊岩組みが立つパターンとは、まったく異なる様式はどこから来たのか？実は磐座にも、須我神社の奥の院磐座のような、たとえ斜面でも安定感やバランス感のある様式とは全くことなるパターンがしばしば見られます。たとえばこの磐座です。一見雑然とした、不思議な力強さは、こんな磐座にも見られます。これらの磐座文化が、直接的に粉河寺などの庭園に影響したとは思えません。しかし「地震で崩落しそうで危ないから撤去しよう」とか、「こんなところに立派な神仏がいるわけないよね」という思考ではなく、「奇しき岩に神仏が宿る」と考えたであろう日本人の伝統的信仰や美意識の土台の上に、粉河寺などの庭園が成り立っているのではないか、そんな気がしてなりません。(磐座の紹介については改めて)毎日更新は限界ですが、三つクリックしていただくと大変励みになります。よろしくお願いいたします(^_^)/~にほんブログ村神社・仏閣ランキング close

粉河寺の豪壮な庭園と古代磐座信仰