安場山（あんばやま）　大杉神社（おおすぎじんじゃ）【データ】　安場山　170メートル▼最寄駅　小湊鉄道・養老渓谷駅▼登山口　千葉県大多喜町大田代▼石仏　安場山山頂、地図の赤丸印。青丸は庚申塔、緑丸は大日、紫は地蔵、茶は琴平神社▼地図は国土地理院ホームページより【独り言１】　内田栄…… more 一氏の『房総山岳志』（注）を頼りに、大多喜町大田代にある安場山に登りました。登山口は集落入口の熊野神社。居合わせた老女に山の様子を訪ねると、社殿の左側から道があったがいまは荒れているとのこと。確かに途中の竹の倒木はひどいものでした。それでも神社の裏山ですから、すぐ山頂に到達しました。　山頂に祀られた石祠が大杉神社です。祠内に「大杉神社」銘の御神体が納められていました。背面に「昭和四十四年／大田代氏子一同」とある立派な石祠です。その屋根を内田氏は「千鳥破風と唐破風を重ねて配した佳品」と評しています。　大杉神社は茨城県稲敷市阿波（江戸時代の安場村）の、利根川と霞ヶ浦に挟まれた台地にある神社です。利根川水系の水運の神から、漁業の神として東北の太平洋岸へ信仰が広がりました。内陸部へは疱瘡除けの神として勧請され、石祠として茨城・千葉に残っています。大田代の安場山は疱瘡除けとしての勧請でしょう。内田氏が佳品と評した石祠の屋根は、本家大杉神社の社殿を模したもので、特注の石祠だと思います。【独り言２】　大田代から南に続く尾根は清澄山まで連なり、林道も通じています。大田代からその林道に入り、しばらく行くと青面金剛の庚申塔が祀られていました。「元文四未（1739）」の造立で、一猿一鶏と施主以下８名も刻まれた庚申塔です。ここは東側の星井畑の近くですから、施主の８名はその集落の人なのでしょう。庚申塔の先には「大□□来」銘の石塔が立っていました。これは内田氏の案内〝西東坂山〟の登山口にある大日如来の文字塔です。側面の「施主進戸」も星井畑の人と思われます。房総の山を歩いているとこの大日如来によく出会います。これが出羽三山の大日なのか、房総特有の大日なのかよくわかりません。　筒森から平野や塚越に出る山越え道には地蔵菩薩が祀られていました。「施主堀之内村／塚越村女中／享保十（1725）十月廿四日」銘のある美しい地蔵です。塚越は筒森から少し離れた地名、堀之内は遠く離れた地名です。安産の神として信仰篤かった筒森神社へ参拝する女たちが祀った地蔵です。登山口で尋ねた女性は、いまでも24日にお参りしているとのこと。24日は地蔵の縁日です。　この日別の女性から、まだ山ビルが出るので持っていきなさいと塩をいただきました。琴平神社では雪駄で山道を登り、祭り執り行う神主に出会いました。おだやかな大田代・筒森の里山歩きでした。（注）内田栄一著『房総山岳志』崙書房出版、2005年 close

石仏番外　安場山（千葉）大杉神社