今ある神社信仰の様式は、みんなが思い込んでいるように、ほんとうに「日本古来の伝統的なものなのか」というのが、本日のテーマです。弥生時代、ひょっとしたら縄文時代から続いている可能性がある、この二つのお社。これは、1300年もの間、何人も足を踏み入れてはならない神聖な場所であった対馬…… more の聖域「オソロシドコロ」です。このオソロシドコロには、本土の人間が想像もしないようなタブーがあります。ここにお参りの後は決して尻を向けてはならず、鳥居まで後ずさりして戻らなくてはならないのです。もし間違って森に入り、これらの石積みを見てしまったら、履いていた草履を頭にのせ『インノコ（犬の子）』と唱えながら後ずさりして戻らなければ、命を落とすのだとか。そして、三重県熊野市の花の窟神社。ここにはそこまで厳重なタブーはなさそうですが、それでもこのふたつに共通しているルールがあります。それは、「靴をぬいで参拝する」という礼儀作法です。そしてこの二つの聖地はともに、神社信仰の中心部である京都・奈良などから、はるか遠くの辺境部に位置しています。あるいは先日の記事で載せた、「部外者は進入禁止」という厳格なルール・タブーを持つお社等である、沖縄のアガイヌウタキ・若狭湾に突き出した大島半島の「ニソの杜」なども、いわば辺境部にあります。柳田国男が提唱した『方言周圏論（ほうげんしゅうけんろん、英: center versus periphery）』は、方言の要素が文化的中心地から同心円状に分布する場合、外側にある古い形から内側にある新しい形へ順次変化したと推定するものです。これを神社に置き換えると、京都や奈良で改良・変化した新しい神社様式は、何十年、あるいは何百年もかかってゆっくりと地方の辺境部へ伝播していったと考える事もできます。テレビやネットがない時代ですから、文化の移行はゆっくりと進むはずです。となると、部外者進入禁止とか、最低でも靴を脱いで参拝とか、辺境部の神社に残る厳重なタブーは、かつて奈良や京都にも存在した古い信仰様式であった可能性があるわけですね。　☆彡柳田国男は、かつて神社に参拝するものは、立って拝むことはなかったと示唆しています。つまり、神様を拝む時は、地面に座ったり伏し拝んだりするのが当たり前だったかもしれないのです。実家へお盆に帰った時、仏壇で手を合わせる方は多いと思いますが、急いでいるからと立ったまま線香に火をつけたりすることはないでしょう。座布団を敷いて、きちんと正座して拝むと思います。それと同じで、今私たちが神社で当たり前だと思っている、≪靴をはいたまま、立ったままお賽銭を投げて祈願し、さっさと帰る作法≫などと言うのは、まったく伝統的ではないのかもしれません。無論それが悪いといっているのではなく、実は伝統信仰もまた、長い歴史の中で大きく変遷してきたものかもしれないと思うだけです。にほんブログ村神社・仏閣ランキング close

花の窟神社とオソロシドコロから考える「伝統信仰」とは